業績なしでも大丈夫?大学院生が学振に採用される方法

 この記事は CAMPHOR- Advent Calender 2018 21日目の記事です.20日目の記事はymyzkPython ウェブアプリのためのプロファイラ wsgi_lineprof の仕組み でした.

 さて皆さん,2018年も残すところあと11日となりました.来年2019年は10連休のGWがあるそうですが,皆さんGWの予定はお決まりですか?あなたが博士後期課程へ進学予定の大学院生なら,おそらく学振の申請書を作成するのではないでしょうか?「学振って何?」という方に,この記事でははじめに学振の概要を説明した後,学振の申請を考えている方へ,私が学振に採用されるためにやって良かったことを伝えたいと思います.最後は,申請に対する思いと当時の体験をおまけとして綴っていきます.この記事が学振採用への一助になれば幸いです.

1. 学振とは何?

 はじめに,学振のことをよく知らない方のために学振について説明します.学振という制度についてよく知っている方はこの章を読み飛ばしてください.学振とは,日本学術振興会の提供する特別研究員制度を指します.日本学術振興会(JSPS)文部科学省が所管している独立行政法人で,特別研究員制度の他に,科研費という大学の研究室などが研究するための資金を提供しています.特別研究員制度は若手研究者の育成が目的で,主に博士後期課程の学生を支援するDCと博士号取得後のポストドクターを支援するPDの2種類があります.この記事ではDCについてのみ言及していきます.DCに採用された学生には,月20万円の生活費が2〜3年間支給されます.申請は修士2年の5月から可能で,もし採用されれば,博士後期課程1年の春から3年間支援を受けられます.その時の申請がだめでも,博士後期課程1年と2年の春に1回ずつ申請が可能で,採用された場合は申請時の次年度から2年間の支援が受けられます*1.前者をDC1,後者をDC2といい,計3回の申請するチャンスがあります*2.本制度はありがたいことに,国内の大学院生ならば,学部・国籍の縛り無く誰でも申請が可能です.支援は返済義務のない全給付型なので,国内の奨学金制度の中では一番支給条件の良い部類と言えるでしょう.

 学振に採用されると,原則副業禁止*3というデメリットがありますが,月20万支給の他に大きなメリットがあります.

  • 月20万円の生活費の他に申請者が自由に使える研究費が約100万円もらえること,そしてその研究費情報が科研費の表示サイト「KAKEN」に掲載されること
  • 履歴書に学振採用内定として記載できること

です.これが何を意味するのかというと,アカデミックポスト(大学教員職)含め研究職を獲得する競争の中で大きなアドバンテージになることです.このため,国内の博士課程進学予定の学生のほとんどが学振に申請をしています.

2. 著者の経歴

 かくいう私も学振に申請してきた大学院生の一人です.後述の学振の申請体験をわかりやすくするために,どのような経歴を辿ってきたのか簡単に記載します.

  • 理学部生物学専攻で,研究活動は学部4年から開始.学部の卒業研究では,コンピュータシミュレーションを行っていた.既存の数理モデルの追試が主だったので,論文投稿・学会発表等の研究成果は皆無.
  • 修士課程から研究室を異動し,研究テーマを骨の形態形成に変更.修士の間は,骨の観察とコンピュータ・シミュレーションを並行していた.DC1不採用.
  • 博士課程では,同研究室で研究テーマを継続して研究中(2018年時点).DC2採用内定(面接免除)*4

 このように私は一度学振の申請で不採用を受けて,2回目の申請で採用をもらっています.一度不採用になった後,どうやって採用までこぎつけたのかを次の章で説明していきます.

3. 学振で採用されるためにやったこと

(この章は学振申請における具体的なメソッドを自らの体験と併せて記載しています.長いので,一案として「4. これから申請する人へ伝えたいこと」を先に読んで,学振申請は良い体験だという気持ちを感じてからこの章を読むという手もあります.)

まず申請書を書く前に

研究業績を稼ぐ

 記事タイトルに「業績なしでも大丈夫?」と書いていますが,私は研究業績がなければ採用はほぼ無理だと思っています.研究業績は後述の申請書作成のメソッドに掛け算で効いてきます.研究業績無しでは,メソッドは半分以下の効果しかありません.記事タイトルの解釈は,修士2年までに業績がなくてもその後巻き返せれば学振の採用内定はもらえる,ということです.当たり前の事実かもしれませんが,DC1申請時の自分はこのことをよくわかっておらず,「業績なしでも採用される」というネット上の記述を信じていました.このため,修士2年の申請時点で主要な研究業績は学会発表予定1件,書籍の解説記事1件しかありませんでしたが,採用されるために申請書を頑張って書きました.当時の思いは,昔のブログ記事に書いてあります*5.10月に開示された審査結果は4項目の5段階評価で,

  • 申請書から推量される研究者としての能力,将来性 3.67
  • 研究実績 2.67
  • 研究計画 3.50
  • 総合評価 3.17

でした.他の項目に比べて,研究実績の点数が平均点以下で低いことがわかります.この結果を見て私は「業績ないと駄目やんけ!!」と憤り,次年度の申請に向けて業績を増やすことを決意しました.学振で記載できる研究業績は主に以下のものが列挙されますが,

  • 学術雑誌等(紀要・論文集等も含む)に発表した論文,著書
  • 学術雑誌等又は商業誌における解説,総説
  • 国際会議における発表
  • 国内学会・シンポジウム等における発表
  • 特許等

その他,

大学の成績に関しては当時もう努力のしようがなかったし,本来の研究成果を反映するのは前者のグループの研究業績なので,学振不採用を受けてから国内学会発表を皮切りにたくさんの学会で発表しました.幸い,修士2年生になってからコンピュータシミュレーションの研究関連で企業のインターンシップに参加し,そこで得た研究成果を国際学会で発表することができました.国際学会発表が終わった後は,骨の形態観察でも結果を得ることができ,論文を書くことになりました.DC2申請時点で業績は,

  • 学術雑誌等(紀要・論文集等も含む)に発表した論文,著書 紀要集に1件
  • 学術雑誌等又は商業誌における解説,総説 1件
  • 国際会議における発表 2件
  • 国内学会・シンポジウム等における発表 3件
  • 特許等 なし

その他,

となりました.研究業績の中でも,特に雑誌投稿論文は他の成果に比べてアピール材料として強力だと思ったので,under reviewの状態で雑誌投稿論文の項目にはルール上記載はできませんでしたが,その他欄に記載しておきました.タイミングよく研究成果がある程度まとまり,論文の提出作業に取りかかれたのは幸いでした*7.これらの研究業績をもってDC2採用時点では自信がありましたが,採用時の審査結果の項目別点数は開示されていないので,もしかしたらそこまで高い点数ではないかもしれません.ですが,これだけ研究業績を積み上げれば生物系分野で採用内定をもらえるということで,1つの基準にしてください.

他の人の学振申請書をもらう

 業績が溜まってきたら,自身の研究能力を審査員に効果的にアピールするための申請書が必要です.申請書の書き方には既に膨大な知見が蓄積されているので,先人に知恵を借りた方が早いです.ということで,学振に採用された5人くらいの知り合いから申請書をもらいました.加えて,他の先輩から学振不採用を受けた申請書と所属研究室の先生から科研費の採用申請書ももらいました.結果的に,これら3種類の申請書をもらうことで,各人に共通した採用のために本当に大事なポイントを見極めることができました.後の「申請書を書くときに」でも言及していきますが,そのうちの1つは,「申請書であっても,読み手側にわくわくする楽しい気持ちを与えること」です.これは教員からもらった科研費申請書を読んだときの体験ですが,驚くことに申請書を読んで思わず笑みがこぼれ,読むの楽しいな,と感じたんです.この体感は,列挙されている申請書作成のコツを見ただけで得られるものではありません.やはり,様々な申請書に目を通すことが重要だと思います.身近に学振採用者がいないという場合でも,ネット上に公開されている申請書をいくつか手に入れて読んでみることをおすすめします.

分野・細目を検討する

 私は人から申請書をもらう際に,どこの分野・細目に出したのかを聞いていました.分野・細目というのは,学振において研究分野の違う大学院生を比較するのは難しいために,専門分野と研究内容に応じて分けられている部門を指します.分野の中に細目があって,それぞれ審査をする大学教員のグループ*8が異なります.申請する分野・細目が異なると,審査員が申請者の研究内容と研究業績を評価する基準が異なります.複数分野にまたがる複合研究をやっている人は,研究内容が複数の分野・細目に該当します.過去の体験記には,分野・細目を変更して次年度申請したら採用された,という話がありました.このため,私もDC2申請時に生物学の細目の他に,工学の応用数理も一度考慮に入れました.しかし,研究内容と研究業績の多寡が審査員にどう評価されるのか感覚が掴みづらかったことを主な理由に,DC1申請時と同じ生物学の形態・構造を選びました.結局,申請書を通すノウハウが充実している研究室でなければ,素直に自分の研究内容に一番近い分野・細目に申請するしかありません.ここで悩むよりは,さっさと申請分野・細目を決めて文章のブラッシュアップに注力した方が良いし,結果的にそれで良かったと今では思っています.

評価書について相談する

 申請書を書き始める前の最後の作業として,誰が評価書に何を書くのか指導教員に相談しました.評価書というのは,学振採用後の所属研究室の指導教員が学生の研究能力を記載する,申請書とは別の書類です.評価書は原則指導教員が書くことになっていますが,一部では学生が自分で書いているという噂もありました.評価書作成のお願いをするときは少し不安でしたが,指導教員は快く引き受けてくれました.評価書では申請者の研究能力をアピールするために,研究業績ももちろん併記されますが,申請書に書く自己評価と丸かぶりしないように,どの業績を主にアピール材料として使うかのすり合わせを簡単にしました.さすがに評価書で採用・不採用が決まるとは思いませんが,不安の種を早期に潰しておくことは大事だと思います.

申請書を書くときに

 何事もそうだと思いますが,どれだけ素晴らしい物事も,それを他人に伝えられなければ台無しです.学振申請では,審査員に自分の研究能力を伝えるために,よくできた申請書が必要になります.「よくできた」の特徴は私の場合,審査員にとってわかりやすい,審査員が私に投資したくなる,の2点でした.以下,2点のそれぞれについて,これを推す理由と実現するために行ったことを記述していきます.

審査員にとってわかりやすくする

 知り合いに聞いた話だと,学振の申請書を読む審査員は,一人に付き20〜30人分の申請書を読むそうです.さらに,それぞれの申請書に対して,評価点をつけ,コメントを記述しなければなりません.審査を行う大学教員は,私の指導教員を見ていて思いますが,締切のある複数の仕事を常に抱えていて,忙しそうです.時間がない中で自分と無関係な20人の学生の申請書を読み捌くとしたら,はじめの5分で採用・不採用の大まかな判別をしたくなるし,内容が理解・納得できる申請書を採用に回したくなる気持ちもわかります.  わかりやすい申請書を書くためには,はじめに要点を箇条書きで並べて論旨を固めてから文章を書き始めた方が後々の修正も楽だと思います.というのも,私はいきなり文章を書き始めてしまって,論旨が固まっていないために,大変苦労したからです.結局,書いた文章は一旦全て捨てて,箇条書きで要点をまとめてから文章を書きました.文章を書くとき,手直しするときには以下の点に気をつけました.

  • 最初の研究背景の説明で専門分野特有の概念が頻出するので,そこで審査員がつまづかないよう,特に丁寧でわかりやすい説明を心がける.
  • 同じ意味の異なる用語を多用すると審査員はこれらが別の意味を指すと誤解しやすいので,専門用語は統一する.
  • 研究背景,研究目的,研究課題など,申請書で記述を求められている各項目について「研究背景は〇〇,研究目的は××,研究課題は△△」と区分けして記述する.これができない場合は研究計画に欠陥がある,もしくは必要な記述が足りないので,いずれにせよ直す.

 また,学振申請書では以下のような装飾技術や表示形式が有効ですが,

  • 重要なフレーズをゴシック体の太字にして目立たせる*9
  • 情報の羅列は箇条書きにして見やすくする
  • フォントサイズを11pt,行間サイズを1.5倍にして読みやすくする

これらのテクニックは簡潔な文章を書けていると簡単に実装が可能です.書きたての申請書では難しかったですが,私は文章に無駄があると思い,その後で重複・不要部分をどんどん削っていきました.  文章の添削も重要ですが,それと併せてさらに重要なのが,概略図 です.概略図は,読んだら3分はかかるような文章を5秒で理解させてくれる,研究内容を伝える上で非常に強力なツールです.概略図は生物系の申請書だと7個必要と言われていました.内訳は,今までの研究の説明に3個,今後の研究背景の説明に1個,今後の研究計画の説明に3個です.気合のある先輩は年次計画にも計画表を併記していました.これら1つ1つの概略図は,データの画像にイラストや吹き出しを付け加えます.理想形は,文章の太字部分と概略図のみで研究の概要がつかめる状態です.私は修士2年から研究室外で発表する機会が多かったので,発表に使った図を申請書用に改変して概略図を作成しました.普段からわかりやすい図をつくることを心がけて,ストックしておくことが重要だと思います.  申請書を一通り書き終えたら,申請書を色々な人に見せてアドバイスをもらいました.指導教員に見てもらうのも1つの手ですが,指導教員は私の研究内容をよく理解しすぎているので,私の研究内容を知らない外部の目線で添削してもらうことは不可能でした.このため,指導教員以外の人に添削を積極的にお願いしました.DC2の申請書の添削で一番お世話になったのは,研究室に出入りしていた外部のポスドクの方と,私が学部4年で所属していた研究室の教員の方々です.申請書を添削してもらうなら,自分の研究を概要ぐらいは知っていて,学振や科研費に採用をもらっている先輩が良いです.添削のときはメールでコメントをやりとりするより,直接会って話しながら改善する方がはかどりました.遠方の方に添削して貰う場合は,申請書のファイルを直接編集してもらって修正後の体感を得てから,自分の方で修正を入れていました.

審査員が投資したくなるようにする

 今一度,申請書を書く目的,ひいては,わかりやすい申請書で何を伝えるのか?という疑問を考えましょう.私は最近悟りましたが,答えは「自分の研究内容」ではありません.「自分が研究者として他者より優れていること」です.このため,申請書全体を通じて2種類のストーリーを審査員に伝える必要があります.  1つは,研究のストーリーです.研究のストーリーは,自分の研究が先行研究で明らかにできていない何の問題を解決するのか,それが分野全体でどういった進歩をもたらすのか,という過去と未来をつなぐ筋書きです*10.これが書けるかどうかによって,研究者としての基本能力は判断されます.  そしてもう1つは,申請者のストーリーです.自分がなぜ研究者を志望するのか,研究者になるために何を実践してきたか,という申請者の現在までの経歴を指します.これには,申請者の研究に対する適性を診断する意味合いと,研究のためにどれだけ行動できるかを判断する意味合いがあると思われます.前者の研究者に対する適性が疑われる具体的な事象として,研究室の異動,実験結果が同期より少ない,の2点があります.例えば,私は修士課程から今所属している研究室に異動しました.これは,その研究室でコンピュータシミュレーションをやりたかったけれど,ノウハウも指導者もなかったので,学部の一年間は別の研究室でコンピュータシミュレーションを習得したという理由があります.このように,研究室異動の理由と,前の研究室でやっていた研究が今の研究にどう貢献しているかを申請書に記述しました.また,同期に比べて結果が少ない場合も,準備が大変な実験をしていたからといった理由を述べている採用者の申請書がいくつかありました.正当な理由があるならきちんと説明して,審査員にネガティブな印象を与えることは避けたいところです.そして後者の研究における行動力は,申請書の自己評価欄で業績を並べてアピールしまくりました.アピールの仕方は,ネットに上がっている落合陽一先生のDC1申請書を真似ました.コツは,謙遜の気持ちを排除することです.ただ業績がないと,過剰な自己評価を肯定する根拠がなくてさむい文章が出来上がるので注意です.逆にある程度業績の溜まっている人は,採用されれば誰も文句が言えないのでアピールしまくってほしいです.ここで気をつけたいのが,アウトリーチ活動が本来の研究活動より多い場合です.これは研究よりもアウトリーチに傾倒しているような印象を与えるので良くないと思います.学振申請において,アウトリーチ活動はあくまで研究業績を土台にした肉付けです.サイエンスコミュニケーターではなく,研究者として投資したいと審査員に思わせるような申請書にしたいものです.

4. 学振申請に対する思い

 ここまでの文章を全て読み飛ばさずに読んでくれた方,本当にありがとうございます!まだ採用内定のぺーぺーな学生の主張をよく受け止めてくださいました...これまで散々申請書作成の技術的な話をを述べてきたので,この章では学振を申請してみてどう思ったか,精神的な面を綴っていきます.

不採用の判定について

 学振では,不採用者の中で上位20%をA,20%〜50%をB,50%以下をCとする判定があります.私はDC1申請でBでした.この判定は学歴と関係がなく*11,さらには次年度の採用可否にも関係ありません.実際,C判定だった先輩が次年度に面接免除の採用内定をもらってました.巻き返しは十分可能です.

結果発表の日

(この段落気持ちが入りすぎて文体が変わっています)  学振って,結果の開示日が事前に公表されてなくて,大学の事務からのメールで結果の開示が知らされるんです.正直,めちゃくちゃ心臓に悪いんですよ!!!これは改善してほしい,ほんとに.私も申請書を提出した時は「この申請書で駄目なら私の研究が面白くないと判断されたんや,諦めよう!」と思うくらいには書類の完成度上げましたよ.ですけどね,結果不採用だったら怖いじゃないですか.一回不採用食らってるし.だから結果が開示されるだろう10月第3月曜日まで何も考えないようにしてたんですよ.そしたら10月の第2金曜日に発表されたじゃないですか.メール見てなかったのに,唐突に伝えてくる先生...や・め・て!!!研究室で不採用通知見たら発狂すると思ったので,家帰って見ることにしました.採用を期待して不採用通知食らいたくなかったので,帰り道は「落ちてても生きていけるさ...」とマインドコントロールめっちゃしました.家で結果見たら採用内定通知きてて奇声あげながら10回くらい跳びました.

学振申請のメリット

 一旦落ち着いて次の話です.この記事では常々業績の重要性を謳ってきましたが,私は業績がなくてもDC1の申請書を1ヶ月かけて書いてよかったと思っています.DC1申請を通して,自分の研究における疑問は何なのか明確化することができ,研究の方針を教授の受け売りではなく,自分の頭で考えられるようになりました.申請書を書くことに慣れたおかげで,次年度のDC2申請は研究と並行して2週間くらいで書ききることができました.もしDC1の申請をしていなかったら,DC2申請時点で業績が溜まっていても,採用されるような申請書はかけなかったと思います.

5. 最後に

 学振を申請することは大方の博士後期課程の学生が必ず体験するイベントです.周りの学生の採用・不採用でプレッシャーもたくさん感じますが,その分採用されると自分が研究者として認めてもらえたことと,自分の研究に価値を感じてもらえたことの喜びはひとしおです.これから申請書を作成する人はぜひ頑張ってください!私も研究頑張ります!お互い頑張りましょう!!

6. 参考

 学振申請にあたり,特に参考になった情報を掲載します.

7. 余談〜学振とアカデミックポスト〜

 本編読了お疲れ様でした.本当に本当にありがとうございます.この章では余談として,学振を取った後にどれぐらいの競争率で大学教員になれるのかを非常に簡単に予想しました.これは,ネット上の学振に関する議論で「学振採用もらえなかった人が大学教員になるなんて無理」という意見を見たときに,それは事実なのか疑問に思ったことをきっかけとしています.  大学教員は一般的に助教から始まり,准教授,教授の順に昇格していきます.よってここでは,教授の定年退官で枠が空いた分繰り上がりで准教授が教授に,助教が准教授になり,博士課程卒業者が助教になれる枠ができると仮定します.国内の大学教授は平成30年度時点で国立・公立・私立含め69,726人です*12.自分の所属研究科の教授が全部で30人くらいいて2年に1人くらい定年退官されるので,年間0.5人/(30人・年)教授のポストが空くとすると,結果,助教のポストが1166人/(70000人・年)分空きます.助教の選考に,博士号取得したての学生とそれ+5年の範囲で年上のポスドクが挑むとします.平成30年度の学振採用者は約2000人なので,全員学振採用経験があるとすると,2000人✕5=10,000人で1166人分の椅子を取り合うことになります.およそ10人に1人の倍率です.もちろん,この粗雑な計算の結果が正しいかは怪しいですし*13,想定した人数にも変動はあるでしょう.しかしこの結果から,年間採用率2割の学振に採用されてたとしても,大学教員の職を得ることは厳しいと察せます.アカデミアか,それとも企業や他の法人の研究所に就職するか,博士課程の学生が多数の選択肢の中から進路を選べると嬉しいですね.これでほんとのほんとに終わりです.読んでくれて,ありがとうございました.

 CAMPHOR- Advent Calenderの明日の記事は どら君の担当です.お楽しみに! 

*1:博士課程3年目からDC2の支援を2年間受ける場合,同じ研究室で研究を継続する条件でのみ20万/月もらえます.

*2:この3回の申請が全て不採用だった場合を俗に「三振」といいます.検索ワードによく上がってきますね.

*3:企業のインターンシップは共同研究目的でのみ可能,RA(リサーチアシスタント)の給料も上限値が月5万など,様々な制限があります.

*4:採用内定をもらうために追加の面接試験を受ける場合もあります.

*5:はじめての申請書作成に翻弄されている様が見て取れます.

*6:研究を一般社会へ広報する活動.

*7:私は学振のために小さな結果を早期にまとめて雑誌投稿論文を書くことに関しては懐疑的です.

*8:審査員セットといいます.

*9:やりすぎは禁物.

*10:自戒をこめて書きますが,先行研究の論文は修士2年〜博士1年までにほぼ網羅して,研究背景を理解していないと,申請書の研究背景が審査員の賛同を得られないしょぼいものになります.

*11:東大生・京大生でもCだったりします.

*12:「学校基本調査 / 平成30年度(速報) 高等教育機関 学校調査 大学・大学院」より抜粋.

*13:何か指摘があったらコメントください.