学振の審査員の気持ちが解った気がする

毎年春は学振の申請シーズンです.今年も何人かの方から,申請書へコメントを求められました.よく,学振の申請書の書き方を指南する記事で,「わかりやすく書く」というアドバイスが頻出しますよね?わかりやすく書く,というのは,審査員が審査しやすくするためです.インターネット上には,申請書を見たとき,審査員がどう感じているのか書かれた記事はあまり見つかりません.というのも,審査員の率直な感情より,さらに発展して,ではどう書くべきか,が論じられていることが多いからです.皆さん,お優しいと思います.今年から自分は,審査員と同じような業務をこなす立場になったので,審査員の感情を自分の体験から想像してみます.

申請書を見たのは夜7時,その日は朝から学生対応の業務,昼に少し実験をして,午後は学部四年生・修士の院生とのディスカッション,その後にまた実験をして,PCデスクに向かうと,「申請書にコメントお願いします」とメッセージが来ていました.この時点でかなり疲れています.

申請書を開きます.まず手っ取り早くどんな内容か知りたいので,①図を見ます.図を見てなんとなく展開が予想できた場合は,次に②見出し・太字・下線でハイライトされている文章を見ます.そして,③業績を確認して,これまで何をやってきたのか把握します.大体ここまでで5~10分ですが,この時点で私は,「この申請書,受かりそう」と予想を立ててしまいます.審査員にとっては,「後でじっくり審査する」か「もう読まない」が決められるかと思います.厳しいですが,①〜③の各段階で,わかりにくいと感じてしまうと申請書を見る意欲は徐々に削がれていきます.

要は,業務と研究でぎゅうぎゅうに詰まったスケジュールの合間に行う審査はかなりシビアだということです. 教員は,学生・ポスドクのように,研究室にいる時間を全て自分のために使えません.特に教授はこの傾向が顕著だと思います.一人ひとりの申請書を全文読んで理解するなんて,できません.この状況を踏まえて,申請書は,「どの情報がどこにあるか予想しやすくする」,「読み返さなくても情報をつかみやすい書類にする」ことが重要だと思います.