じいちゃん私、博士課程に行きたいです

 先日、お盆で地元に帰省しました。お盆は毎年、祖父母の家に顔を出し、親戚一同でご馳走を食べています。その際、必ず話題になるのは私含めた孫達の進路。じいちゃんたちは、未来ある若者の将来に(もちろん良い意味で)興味津々です。けれど、私の進路が「博士課程進学」と聞くと、博士課程という単語に耳慣れない彼らは、一瞬戸惑ったような不思議な顔を私に向けてきます。親戚内で前例も無いし、このような反応になるのは仕方がないのです。
 実際、博士課程はほとんど認知されていません。息子や娘に「博士課程に行きたいんだけど」と言われて、即座にYes/Noを返せる親は大学の先生ぐらいではないでしょうか。大抵の方はうちのじいちゃんみたいな顔をするはずです。博士課程について検索をかければ無数の記事が出てくるけれど、私の場合は主にじいちゃんと伯父さんに向けて、自分の所見を混ぜて博士課程を説明してみます。皆さんの参考にもなれば幸いです。

博士課程いくと、ぶっちゃけ金稼げるの?

 一番尋ねられる質問です。ほぼ毎年聞かれている気がします。すでに博士課程の実情を知っている人は0.1秒くらいで答えるでしょうが、読者は博士課程を知らないことが前提なので、答えは後で言うことにします。
 そもそも博士課程とは何なのでしょうか?博士課程は大学院の課程の1つです。大学院は、一般的には大学を卒業して次に進学するところ。大学は、卒業すると学士号、というものがもらえます。皆さんは自動車免許を持っているでしょうか。あれは、運転に必要な知識・技能を習得して、その証としてもらえる資格です。学士号も似たようなもので、専攻の学問をよく学びました、という証、資格のようなものです。大学院も概要は同じで、入学すると学生はまず修士号の取得を目指します。修士号の取得後、博士課程へとさらに進学し、うまくいけば博士号が取得できます。以上が大学院での課程です。〇〇号という資格が学士、修士、博士の3種類あって、それらを取得するために課程が設けられています。
 理系の学生は半分〜8割くらい、文系の学生は1割未満、修士号まで取得しているように思います(私の所感なので、詳しいデータは他を参照してください)。理系の学生の場合、日本の企業就職時に修士号を持っていれば、学士号のみ取得している人より初任給が高いことが多いです。つまり金が稼げます。単純に考えると、博士号はさらにお金がもらえそうでしょう?面白いことに、現実はそうでもありません。博士号取得者の初任給を高めに設定している企業は稀ですし、なんなら博士課程卒の学生お断りの企業だって存在します。日本の企業は博士課程の学生に少し、つめた〜いのです。ううっ。世界は事情が違って、博士号を持っていることが企業の研究職においてもスタンダードな文化である(ようです。実際に現地に赴いたわけではないので、こちらも他を参照。)
 結論は、博士課程儲かりません!もし、子供、孫が博士課程に行くといったら、「あと数年、子供の好きにさせてやるか〜」ぐらいの気持ちで見守っていただきたいです。子供の将来に金銭的なリターンを求める場合は、博士課程の進学は要検討です。

じゃあ、数年かけて博士課程って何すんの?

 端的に言うと、研究、です。研究は、(主に大学で学んだ)既存の学問に対して、新しい発見・発明を足していく活動です。新しさには、研究している人の独自性が多分に反映されるため、大学院で行う研究は極めて自由度が高いです。皆、好きなことをやって日々何か発見しているのです。だから研究の楽しさは、本来お金と全く関係がありません。前述の「博士課程進学すると、金稼げるの?」という質問に対しては、やや言い方は悪いけれど「毎日好き勝手してほとんどあなたの役に立たないことしてる人にお金投資したいですか?」という質問が返答になるでしょう。まあ、大体の人は「NO」といいますよね〜。そりゃそうです。
 博士課程に進学する人の動機は様々。小さい頃から科学者になりたかったからという人に比べて、私の動機は結構違います。科学者になりたいと思った経験はないし、小学生の頃は漫画家になりたかったです。小学校高学年から勉強を真面目にやり始めて以降、特に将来の夢はありませんでした。博士課程に進もうとする動機については、今のところ自分探しだと思っています。ええと、真面目に研究やりたい気持ちもありますよ。修士課程では時間が足りないので、博士課程に行くつもりです。だからそんな引いた目で見ないでください。自分探しと言っているのは、博士課程で自分は何に興味があるのか、どこまで研究を突き詰められるのかはっきりと確かめてみたいからです。修行みたいなもんです。一応真面目そうな理由ですが、実生活は至ってのんびり過ごしています。大学院という場所は、こんな人間が1人くらいいても良いおおらかな世界なのかなあ、と感じています。

最後に

 博士課程まで進学すると、大学院の課程は基本的に5年です(医学部など一部の学部では事情が異なるので要注意)。大学まで含めると計9年間で、とても長い学生生活を過ごします。私はあと最低3年親戚に、まだ学生なの?、と言われるの受け流していく所存です。この記事を読んでもらって少しでも事情をわかってもらえると嬉しいですが。まずはうちのじいちゃん、PC持ってないから紙で記事印刷しないと!