博士後期課程3年生が行ったアカデミア就活

この4月から大学の助教になりました.内定を得るまでの活動について,知り合いが設けてくれた勉強会で話したのですが,一部の学生だけが情報を得られる状況は不公平だと思ったので,ここに公開します.これを知ったからと言って,内定をより多くもらえるかはわかりません.あくまで読み物として楽しんでください.

志望職種を固める

博士号取得後に就職する先として,大きくは2つに分かれるかと思います.一つは大学と,理研など法人を含めたいわゆるアカデミア,もう一つは民間企業です.私は,博士2年生ぐらいからアカデミアへの就職を考えていました.さらに,海外への留学か国内での就職かで選択肢を検討しました.海外への留学は一度考えましたが,コロナウイルスの流行によって現地での研究活動が十分にできなさそうなこと,万一病気に罹ったときは日本の医療体制の方が信頼できること,この状況でなお行きたい研究室は特になかったことから,やめました.加えて,国内で助教職についたら短期的に留学する準備はできるだろうと思い,就活では国内の大学の助教職,もしくは法人の研究員になることを目指しました.ポスドクではなく助教を目指したのは,任期期間が長いから,それと,早く常勤職につけるよう段階を踏みたかったからです.

求人を見つける

求人を見つける方法はインターネットにも広く公開されています.珍しくはないですが,私は J-RECIN と,所属学会からのメールマガジンをチェックしていました.あとは知人からの紹介です.紹介といっても,こういった公募があるから,書類出してみたら,と言われただけです.しかし最終的にはこの紹介が現在の就職に結びついたので,普段の学会活動や研究室訪問で知り合いを増やしておくこと,自分が職を探していると売り込むことは大事だと思いました.

公募に申請する書類を揃える

私は2件の助教公募に応募しましたが,どちらでも求められたのは,これまでの研究内容の説明と業績リスト,着任後の研究計画です.書類作成は6月から7月に行いましたが,以前に別件の申請で似たような書類を作っていたので,これまでの研究については転用しました.着任後の研究計画は,転用できる素材が不足していたため,少し考えて書きました.研究計画に具体性を持たせるためにも,普段から,どういう研究を今後やっていきたいか,考えておく必要があると思います. また,各大学それぞれで,教育に対する抱負もしくはなぜこの学科を選んだのか,という項目がありました.これは,それぞれの職で重要視されていることなのだと思います.教育に関しては経験がほとんどありませんでしたが,少ない体験談を盛り込みながら書きました.

面接

9月頃に書類審査通過のメールが両大学から来て,10月に面接をすることになりました.コロナウイルスの感染対策から,どちらもzoomを使いました.従来の公募面接は現地に赴かねばならず,遠方であれば面接日の前後はつぶれることを考えると,ネット上での面接は非常に便利です.実際に,今回2つの面接を,一日置きで実施できました.このスケジュールはネットを使っているから可能だと思います.加えて,面接の直前まで計算機実験を回すことができたので,面接前後の時間も有意義でした.コロナウイルスの感染が落ち着いても,ぜひネット上での面接を継続していただきたいです.

面接はというと,どちらも複数人の先生を前に,研究内容の発表をして,その後は質疑応答でした.審査時間は大学によって異なり,片方は10分+10分,もう片方は30分+30分でした.先生方の反応はどちらの大学でも好意的で,質問も多数いただきました.個人的には,どちらも良くできたと思っています.

結果

片方の大学からは,数日後に結果が来て,採用内定をいただきました.一方で,他方の大学からはしばらく経っても結果は来ず,3週間後に不採用のメールをいただきました.当時は,面接の感触が良かったので,不採用の結果に少しショックでしたが,すでに別の内定をいただいていたので,あまり拘らなかったです.マッチングしなかっただけだと割り切れました.どちらに就職しても良いところと悪いところがあると考えていたので,結果には満足しています.

何が採用内定の決め手になったのか

就活が終わった後に,様々な人と話をして,何が就職の決め手になったか考えましたが,一番は,指導教官がこれまでやってきた研究とは異なる,独自の研究を実践していたことだと思います.学生時代はそのせいで研究の進め方に悩んだり,なかなか成果が発表できなかったり苦しい体験がありましたが,今回の就職でそれらは無駄ではなかったのだと思えました.