研究における論文の探し方・読み方(博士課程3年目編)

 論文を探して読む作業って,研究室に配属されたら理由も分からないまま義務になるけど,効率よくこなすコツは教えてもらったことがない.今はなんとなくできるようになったけど,コツをつかむまで苦労する過程は初めて研究する人が繰り返すべきものでもないと思う.今回はひとまず,今どういう方法で論文を探し,読んでいるかドキュメントとして残すことにする.

この記事を書いている人が論文を読む研究分野

生物学,設計工学(トポロジー最適化),ときどきコンピュータグラフィックス

論文の探し方

 論文データベースに適当なキーワードを入れて検索する.生物系(実験・理論生物学両方)ならまずPubmedを使う.Pubmedだと3語くらい入れるとBest matchの論文を優先的にサジェストしてくれるので便利.トポロジー最適化について調べるときはPubmedに記事がないので,より広い範囲の論文データベースであるWeb of scienceやGoogle scholarで調べる.コンピュータグラフィックスについては,技法の名前を直接Googleに入れて,検索上位に出てきた論文を読む.

 上記で述べた後者2つは技法習得が主なので,欲しい論文がある程度はっきりしていて,単一の原著論文(Article, Letter)を読めば済むことが多い.対して,自分の主軸である生物学の研究について背景を知りたい,となったときはより多くの論文を読む.ただ,闇雲に原著論文を読んでも体系的な情報は得づらいので,自分の場合は,目的の研究分野の総説論文(Review)をまず探す.研究背景は良い総説論文を一本読めれば大体わかることが多い.総説の見つけ方は,まず論文データベースもしくはGoogleにキーワードを適当に打ち込んで,タイトル・アブストラクトがキーワードに合致してそうなものがあるか探す.なさそうなら,手持ちの論文にReviewが引用されてないか探す.それでも無かったら,手持ちの論文のラストオーサーがReviewを書いてないか探す.ここまでやったら大体Reviewは見つかるはずで,Reviewを読んだら,そこに含まれてるキーワードで検索をかけて,できるだけ新しい論文(これは原著論文で良い)を読む.検索結果に論文が出てきたときに現れる「被引用件数」をクリックすると,該当論文が引用されている論文がGoogle Scholarを通じて出てくるので,それをしまくって新しい論文を探している.あと,変則的な方法として,キーワードを入れたときにGoogleの画像検索に一旦飛ぶ.そこで良さそうな図があれば,その図の載っている論文を読む.

 総説と最新の原著論文がいくつか読めれば,ある程度体系的に歴史が解った上で最新研究の課題まで発見することができる.論文を読んで研究背景を理解する目的は,既存研究の問題点を見つけることなので,これで目的は達成されたことになる.

論文の読み方

 検索作業はPCでやって,一旦ダウンロードした論文をAirdropでipadに共有して,書き込みながら読む.使っているipadのサイズは12.9インチ.A4の紙とほぼ同じサイズなので,読みやすい.昔は紙で読んでいたんだけど,ペラペラして持ちづらいし,書き込むときは机において下を向かなければならず,首が痛かったのでやめた.ipadが縦置きできるカバーを買って,丁度いい角度に傾けながら論文を読んでいる.使っているアプリは標準装備のブック(Apple Books).Apple pencilによる書き込み・語句検索ができればそれ以上の機能をまだ求めていないので,GoodNotesやNotabilityには手を出していない.

 使っているipadのカバー↓

moshi-shop.jp

 自分の求めている事柄が書かれているかどうかは,ConclusionとAbstractを読んで判断する.そこから全文読むにせよ,そうでないにせよ,一応全ての論文について内容のメモをMarkdownでとっている.タイトル・著者名を書いておいて,以下の疑問に答える形で,分かる範囲でいいから記述しておく.

  • どんな論文?(概要)
  • 先行研究と比べてどこがすごいか?(新規性・独創性)
  • どんな結果・技術がキモになっている?(根拠)
  • どうやって有効だと検証した?
  • 議論はある?
  • 次に読むべき論文は?

 これらをメモしておくと,「あのフグの椎骨の発生について書いた論文なんだっけ」となったときに「フグ」とかで検索すればヒットするので,論文が思い出しやすい.昔はMendeleyを使っていたのだけど,サービスが急にバグって使えなかったときにストレスフルだったのと,論文に関するメモをとらないと論文の情報が覚えられなかった.Mendeleyでも一応メモは取れるのだけれど,MendeleyのGUIにテキストを打ち込むくらいなら,普段使ってるエディタの方が物を書きやすいので,現状の方法に落ち着いている.